不動産相続における現物分割とは？メリットや現物分割に適したケースを解説

複数の相続人で不動産を相続するとなった場合、どのように分割するか話し合う必要があります。
遺産の分割方法には3つの種類がありますが、よく用いられるのが「現物分割」です。
この記事では現物分割とはなにか、メリットや現物分割に適したケースなどを解説します。
台東区、葛飾区、江戸川区、江東区、荒川区、足立区、北区、城東・城北を中心に23区で不動産を相続する予定のある方は、ぜひ参考にご覧ください。

相続した不動産の現物分割とは？

はじめに現物分割とはなにかを解説します。
現物分割とは、被相続人（亡くなった方）の財産をそのままの状態で分割することです。
たとえば、相続財産に「時価900万円の土地・時価200万円の自動車・現金1,000万円」があり、姉と妹で相続するとしましょう。
この場合に、以下のような方法で分け合うと現物分割に該当します。

• 姉が受け取る財産：現金150万円 ・時価900万円の土地
• 妹が受け取る財産：現金850万円 ・時価200万円の自動車

また土地の場合は、複数に「分筆」して相続人それぞれで取得するのも現物分割にあたります。
分筆とは、登記簿上の1つの土地を複数の土地に分けて登記し直すことです。
相続人が複数いる場合でも、分筆して現物分割することで、比較的公平に分けることができます。

現物分割以外の分割方法

遺産の分割方法には、現物分割以外に「代償分割」や「換価分割」があります。
代償分割とは、法定相続分よりも多く遺産を受け取る方が、ほかの相続人に対して差額分を代償する方法です。
たとえば兄が時価1,000万円の不動産を相続したいと申し出て、弟は現金900万円の取得を希望したとしましょう。
この場合、代償分割をするには兄が代償金として弟に50万円支払う必要があります。
代償分割は、現物分割では法定相続分どおりにうまく分割できないときに選択されることが多いです。
一方で換価分割とは、対象の遺産を売却して金銭に換えてから相続人同士で分割することをいいます。
たとえば相続した土地を1,000万円で売却して、相続人4人で250万円ずつ分ければ換価分割に該当します。
換価分割は、現金や預貯金の割合が少なく現物分割が難しい場合や、誰も取得したがらない財産がある場合に用いられることが多いです。

相続における現物分割のメリットとデメリット

ここでは、現物分割のメリットとデメリットをご紹介します。

メリット1.ほかの分割方法に比べて手続きが簡単

現物分割のメリットとしてまず挙げられるのが、手続きが比較的簡単におこなえることです。
対象の不動産を相続人それぞれが取得するだけなので、面倒な手続きは必要ありません。
たとえば姉が不動産を取得して妹が株式を取得する場合、それぞれが財産の名義変更をするだけで手続きが完了します。
換価分割のように相続人全員で財産を売却したり、代償分割のように不動産を評価して代償金を支払ったりする手間がかかりません。

メリット2.財産の評価に関するトラブルを回避できる

現物分割をおこなう際は、相続財産の厳密な評価が不要です。
不動産の評価方法には複数の種類があり、どれを選ぶかによって評価額が変動します。
換価分割や現物分割は不動産の評価額が重要になるため、評価方法を巡ってトラブルになるケースも少なくありません。
その点、現物分割であれば「私は車」「僕は土地」などのように相続人同士が納得して遺産を分割すれば良いので、評価に関するトラブルを回避できます。

デメリット1.不公平になりやすい

現物分割にはさまざまなメリットがある一方で、不公平になりやすいというデメリットもあります。
たとえば遺産の大部分を不動産が占める場合、兄が1人で不動産を相続するといってもほかの相続人は納得しにくいでしょう。
とくに土地や建物などの不動産は、ほかの遺産に比べると資産価値が高くなりやすいため、現物分割では揉めてしまう可能性があります。

デメリット2.土地の場合は資産価値が低下する可能性がある

前述したように、土地の場合は分筆をすることで比較的公平に分割できるようになります。
しかしすべての土地が分筆に適しているわけではありません。
分筆によって袋地や接道のない土地が生まれるようなケースでは、土地の活用方法が限定され資産価値が低下する可能性があります。
また、条例によって分筆が禁止されている地域もあるため注意が必要です。

相続した財産を現物分割しやすいケースとは

現物分割は遺産を分ける際によく選択されている方法ですが、すべてのケースに適しているわけではありません。
まずは現物分割がどのような場合に向いているのかを確認しておきましょう。

現物分割しやすいケースとは

以下のようなケースは現物分割しやすいケースといえます。

• 多様な遺産がある場合
• 相続する遺産の額を預貯金などで調整できる場合
• 特定の相続人に遺産を集中させたい場合

遺産のなかに不動産や現金、自動車など多種多様なものがある場合は、現物分割しやすいといえます。
なぜなら、相続人それぞれがなにかしらの遺産を取得できる可能性が高いためです。
長男は不動産、次男は現金、三男は自動車などのように、公平に分割できればトラブルに発展するリスクを回避できます。
また、遺産のなかに預貯金や現金があり、分割する遺産の額を調整できる場合も現物分割しやすいといえます。
たとえば相続財産に「600万円の株式・1,000万円の土地・1,000万円の預貯金」があり、姉と妹で相続するとしましょう。
この場合、姉が300万円の預貯金と1,000万円の土地を取得し、妹が700万円の預貯金と600万円の株式を相続すれば公平です。
このように現金や預貯金などで調整ができ、また相続人全員が納得していれば、相続手続きが簡単に済むため現物分割をおすすめします。
そのほかにも「実家を継ぐ長男に財産を多く相続したい」など、特定の相続人に財産を集注させたい場合も現物分割を選択する方が多いです。

現物分割が向いていないケース

以下のようなケースは現物分割が向いていないといえます。

• 建物や自動車など物理的に分けることが難しい場合
• 現物分割をすることによって財産の価値が著しく減少する場合
• 分筆が禁止されている場合

遺産が建物や自動車しかない場合は、そもそも物理的に分割することができないため、現物分割がおこなえません。
この場合は、換価分割や代償分割を検討することになります。
また、現物分割をすることによって財産の価値が著しく減少する場合も、現物分割には向いていません。
具体例として、共有する土地が狭いケースなどが挙げられます。
狭い土地は現物分割をするとさらに土地の面積が小さくなるため、資産価値が大幅に減少する可能性があります。
とくに「最低敷地面積」などの規制が定められている都心部では、現物分割がより難しいといえるでしょう。
また前述したように分筆を禁止しているエリアもあるため、分筆が可能かどうかあらかじめ自治体に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

相続における現物分割のメリットやどのような場合に向いているのかなどを解説しました。
現物分割はほかの分割方法に比べて手続きが簡単ですが、不公平になりやすいなどのデメリットもあります。
トラブルを避けるためにも、分割方法について相続人で十分に話しあうことが大切です。
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